Empower and Revitalize Japan for Next Generation
SOPHOLAのVision(目指す世界観)、Mission(果たす役割)、Values(大切にする価値観)を体現する取り組み・アイデアを発信。
SOPHOLAの雰囲気がわかるような社員の日常や想いも更新していきます。
効率化をもう一度考えてみた
今朝、コーヒーマシンがコーヒーを淹れてくれるのを待ちながら、一つの問いが浮かびました。
「効率化は、何を省いているのだろう?」
ボタンを押せば10秒くらいで一杯が仕上がります。便利です。合理的です。でもその待ち時間に、なぜかこんなことを考えていました。
ドリップで一杯ずつ丁寧に淹れる場合、その時間に何かがあったのではないか、と。
実はこの問い、先日登った池口岳の山中でも頭をよぎっていたものでした。
遠山郷で聞いた一言
池口岳は南アルプス深南部に位置し、アクセスも容易ではない静かな山です。前夜は地元の宿「いろりの宿 島畑」に泊まりました。
ご主人がとても明るく優しい方で、いろいろな話を聞かせていただきました。
そこで印象に残った一言があります。
「一昔前は小中学生が250名ほどいたけど、今は高校生が1名だけ。若者が就ける仕事もないからね。」
遠山郷から池口岳への登山道は丁寧に整備されています。でも、過疎化が進めばこの環境が維持されるとは限らない。
「10年後、この山道はどうなっているのだろう」と考えながら、高度を上げていきました。
若者が地元を離れるのは、ある意味では合理的な選択です。より効率よくキャリアを築き、経済的な安定を得るために大都市へ向かう。
個人の判断としては正しい。でも、その合理的な選択が積み重なった先に、高校生1名という現実があるんですよね。
一次産業も製造業も観光業も、プロセスが長く、身体を使い、すぐに結果が出ない仕事です。「効率が悪い」という評価が積み重なって、選ばれなくなっていく。でも棚田を耕すこと、木を育てること、宿に火を灯すこと——そのプロセスの中に、地域の記憶や文化や景観が宿っています。それが省かれた先に、今の遠山郷があるような気がしました。
省くのは「無駄」だけではない
これは遠山郷だけの話ではないと思います。
AIに質問すれば即座に答えが返ってきます。サプリを飲めば食事から摂りにくい栄養素を補えます。
検索すれば一秒で言葉の意味がわかります。ナニーに育児を任せれば、親は仕事に集中できます。
どれも合理的です。時間は有限ですから。
でも、国語辞典を開いて言葉を調べていたとき、目的の言葉を見つけるまでのページをめくる時間に、見知らぬ言葉が目に入ってきたことはなかったでしょうか。そしてその偶然の出会いが、思いがけない興味の扉を開けたことは?
私が研究の中で考えていることがあります。AIが「効率よく答えよう」と最適化すればするほど、人間の思考の余白を奪ってしまうという逆説です。完璧な答えが即座に返ってくるとき、人は自分で考えることをやめてしまう。でもこれはAI固有の問題ではなく、効率化という、もっと古くて大きな潮流の一部に過ぎないのではないでしょうか。
サプリは栄養を届けてくれますが、食材を選び、調理し、食べるというプロセスの中にあったもの——身体との対話、季節の感覚、食への感謝——は届けてくれません。ナニーは育児の負荷を軽減してくれますが、子どもにとっての愛着形成、そして親自身が育てられていくプロセスは、代替できないかもしれないですよね。
効率化が省くのは、無駄だけではありません。プロセスの中に宿っていた、大切な何かも一緒に省いてしまうこともあるのではないでしょうか?
非効率の中にあるもの
私はこれまで250座の山に登ってきました。
山は徹底的に非効率です。時間も体力も消費します。山頂の景色だけが目的なら、ドローンで撮った映像を見ればいい。
でも、登るプロセスの中に、求めているものがあります。過去の自分、現在の自分、未来の自分が静かに対話を始める時間が。今回の池口岳でも、遠山郷の景色を眺めながら、そんな時間がありました。
今朝のコーヒーマシンも、ある意味でそうでした。自分では何もしていない。ただ待っているだけ。その何もしない数十秒に、今日の問いが生まれました。
素通りするには、少し惜しい問い
これは私が独自に発見した問いではありません。
きっと多くの方が、どこかで一度立ち寄ったことのある問いだと思います。AIの話で立ち止まる方もいれば、育児の話で気になる方もいれば、遠山郷の高校生1名という数字で初めて実感する方もいるかもしれない。どの入口から入っても、たどり着く問いは同じです。
効率化を否定したいわけではありません。何を省き、何を残すか。その選択眼こそが問われているのだと思います。
コーヒーマシンの前で、ふと考えた朝でした。
SOPHOLA株式会社
創業者兼代表取締役
飯野 正紀
P.S.遠山郷の道の駅は日帰り温泉もあり、美味しい食事処もあって本当に素敵でした!
12月には国の重要無形民俗文化財に指定されている遠山の霜月祭りがあるらしいので、子供達と一緒に行ってみたいと思います。
