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Empower and Revitalize Japan for Next Generation

SOPHOLAのVision(目指す世界観)、Mission(果たす役割)、Values(大切にする価値観)を体現する取り組み・アイデアを発信。
SOPHOLAの雰囲気がわかるような社員の日常や想いも更新していきます。

石碑が教えてくれた、山が持つ時間の不思議な力

先日、近場にあるお気に入りの山、「鉢伏山(はちぶせやま)」に登ってきました。鉢伏山は、息子から「パパ、鉢伏山にはいつ行けるの?」とよく聞かれる山で、アルプスへのステップアップに位置づけるような少し歯応えのあるコースがあり、何より頂上付近の圧倒的な開放感が大好きで、私にとってセカンドホームマウンテンのような位置付けの山です。
いつも扉温泉からのスタートでしたが、この日は気分を変えて、山深い名刹、「牛伏寺(ごふくじ)」からのルートを選んでみました。車を停め、山行のスタート地点となる駐車場の脇に立ったとき、緑に囲まれた立派な石碑が目に留まりました。そこには、非常に達筆な崩し字が刻まれていました。
文字はすぐには読めなかったのですが、なぜかその石碑の前に立った瞬間、気になってしまい見入ってしまいました。

激動の時代を生きた哲学者と、石碑の言葉

気になって後から調べてみると、その石碑は、大正から昭和にかけて文部大臣や学習院院長を務めた哲学者、安倍能成(あべ よししげ)氏の書によるものでした。あの場では全く読めませんでしたが、そこに刻まれていたのは、このような言葉でした。

山静似太古(やま しずかにして たいこににたり)
日長如少年(ひ ながくして しょうねんのごとし)

「山の中の静けさは、人間が文明を作る前の『太古の時代』のようにどこまでも深く、ここで過ごす一日は、子供の頃に感じたあの『終わらない一日』のように果てしなく長い」という意味だそうです。
安倍能成という人物は、太平洋戦争へと向かう厳しい時代に旧制一高の校長として軍部の圧力と戦い、戦後はGHQと渡り合いながら日本の新しい教育の土台を作った、まさに命を削るような多忙と激動の中にいた人でした。そんな彼が、あらゆる雑音から離れ、唯一「鎧を脱いで、一人の人間に戻れる聖域」として愛したのが、この牛伏寺の山だったのです。日常の忙しさで早く消費されてしまう時間をリセットし、人間としての原点(太古・少年)に戻る。あの石碑は、そんな山の不思議な力を表現したものだったんです。だから一目見て何か気になってしまったんだと不思議な縁を感じました。

憂鬱を抱えて歩いた道と、不思議な心の変化

この言葉の意味を知ったとき、私はその日の山行と一本の線で繋がっていることに気がつきました。実は、歩き始めた当初の私は、前夜の疲れや日常のモヤモヤを引きずっており、ずっと憂鬱な気分が抜けずにいました。そもそもその日は山に行くのも諦めていたほど。珍しいフランス式階段という沢沿いの美しい樹林帯を歩きながらも、頭は日々の重い問題を考え、足取りは少し重かったんです。
しかし、牛伏寺分岐の手前で、グループ登山をされている人生の先輩方とバッタリ出会いました。そこで足を止め、お互いに冗談を言い合いながら少し言葉を交わした瞬間、不思議なことが起きました。それまで胸に閿えていた憂鬱な気分が、嘘のようにスーッと軽くなっていったのです。
山を歩くこと、そして山で交わされる何気ない一期一会の会話には、下界のストレスを一瞬で溶かしてしまう、不思議なデトックスの力があります。歩みを進めるうちに、私の五感はどんどん山の静けさに同化していきました。

濃密な「少年の時間」と次の挑戦へ

辿り着いた鉢伏山の山頂は、相変わらず言葉を失うほどの最高のパノラマが広がっていました。あの圧倒的な開放感に包まれていると、日常の悩みなど本当にちっぽけなものに思えてきます。
山頂では、偶然出会った登山者の方々と、弊社が取り組んでいる登山者向けブランドや商品などについて話す時間もありました。とても楽しみにしてくれて、多くの失敗を重ねながら試行錯誤して前に進めてきてよかったなってその時感じました。気づけばあっという間に時間が過ぎて下山を急ぐことになりましたが、振り返ってみると、その一瞬一瞬が驚くほど濃密で、まるで子供の頃の長い夏休みの一日のような、満ち足りた時間が流れていました。まさに「日長如少年」の充実した時間を体験した気がしました。
日々色んなことが起こりますが、山にはこうした不思議な力があって、自分の心や頭にのしかかる重圧を解き放ち、自分自身頭と心をリフレッシュさせ、本来の自分に戻し、自然やそれを愛する人々と溶け合う時間を過ごさせてくれたりすることがあります。そんな山を子や孫世代に残せるようなプロジェクトを前に進めていきたいと思います。
SOPHOLA株式会社
創業者兼代表取締役
飯野 正紀