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ChatGPTから改めて見える日本の5つの課題
米国のOpenAIがリリースした「ChatGPT」が、日本でも連日さまざまなメディアで報じられ、日本国内のデジタルマーケティング業界のさまざまな企業がChatGPTを活用したアプリケーションの開発に躍起になって取り組んでいます。私は海外の最先端デジタルマーケティングテクノロジーを日本国内に輸入するビジネスを7年近くやっているためか、この状況を見ていて「いつも感じている課題感」を痛感しています。今回は、行政、支援事業者、利用事業者、それぞれの立場における、主だった5つの課題を綴ってみようと思います。
第1の課題:(これまで同様)国産ではなく、海外産である
検索、ソーシャル、そしてマーケットプレイスなど世界中で利用されるプラットフォームは、全て国産ではなく、海外産です。日本人からすると、20年以上続くこの状況を違和感ないほどに受け入れてしまっているので、私の知る限り、メディアでも「なぜ、ChatGPTのような生成AIツールを世界に先駆けて日本発でリリースできなかったのか?」という報道が見当たらないですよね。現在、世界中で利用されているソーシャルプラットフォームのTikTokは2012年北京でByteDanceという企業が創業され、2016-2017年にリリースされています。ここでも、「なぜ、TikTokのようなソーシャルプラットフォームを世界に先駆けて日本発でリリースできなかったのか?」という自問自答を国としてしていかない限り、他国で創られたデジタルインフラに乗ったビジネスを展開するしかない状況は今後も続くでしょう。国全体の課題なので、本来は全てのステークホルダーに必要な課題意識なのではないでしょうか?
補足:実際にChatGPTの登場を受けて、東京工業大学と富士通が日本語に強い生成AIの開発を開始したそうです。(参照:英語ーhttps://www.asahi.com/ajw/articles/14914749)
第2の課題:不完全な物を受け入れない
それでは、「なぜ、ChatGPTのような生成AIツールを世界に先駆けて日本発でリリースできなかったのか?」の背景にどういう原因があるのでしょうか?それは、「不完全な物を受け入れない」という行政、利用事業者側(消費者もそうです)のよく見られるスタンスにあります。ChatGPTは、ユーザーの問いに対して、必要なデータがなかったり、正しいデータを選択できずに間違った答えを出すこともしばしばあります。しかしながら、誤回答を織り込みながらChatGPTを利用する方法を記載した記事も出てきています。(参照:日本語ーhttps://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02380/030600003/)
ChatGPTのように大きな話題になって連日メディアで取り上げられているためか、この第2の課題が露見していないだけな気がしてなりません。ChatGPTほど話題性もなく、消費者に広く普及することのないtoB向けの優れたテクノロジーは海外にまだまだ山のようにあります。日本国内でも同様もしくはそれ以上に優れたテクノロジーを開発することができる開発者は沢山いるかもしれません。しかし、その多くは行政、利用事業者側の「不完全な物を受け入れない」スタンスのためにその芽が育つことなく、知られることがない状況です。子育てと一緒で全てのプロダクトは、バージョン0の不完全な物からスタートして膨大なインプット、アウトプットを繰り返して初めて大きく成長していくことを再認識することが必要だと感じます。
第3の課題:日本語でなくてはダメ
今年1月に「力不足で輸入できていないマーケティングテクノロジー」という題でブログを書きました。その時にも書きましたが、「日本語の自然言語処理のプログラムを別でテクノロジー企業に開発してもらう必要がある」ため、コンテンツ生成AIテクノロジーの導入を会社として取り組むのを控えてきました。しかし、海外産の優れたテクノロジーの殆どはUIが英語になります。ChatGPTも英語のみに対応していたら、日本でここまで流行することはなかったですよね?しかし、第一言語が英語でない様々な国々のテックパートナー、事業主、知人・友人がいますが、皆英語であらゆる国々のテクノロジー、ツール、プラットフォームを上手に活用しています。どちらの方が個人・企業間競争力が高くなるか、より多くの選択肢がある方だと個人的には感じています。これも国全体の課題なので、本来は全てのステークホルダーに必要な課題意識なのではないでしょうか?
第4の課題:先例主義
一言目、二言目には「事例はありますか?」という先例主義は、新しいテクノロジーの開発を大きく遅延させます。例えば、未知なるテクノロジーが次々に生まれるイスラエルという国。なぜ生まれるのか?その理由の一つは過去に事例のない、類を見ないtoCやtoBで役立つテクノロジーを開発して、世界と伍する国力を持とうという国のビジョンに加え、それらテクノロジーを開発する支援事業者と活用する利用事業者のコンセンサスがあるからだと感じます。これも行政側と利用事業者側によく見られる課題ですね。
第5の課題:閉鎖的なプロダクト
「さまざまな企業がChatGPTを活用したアプリケーションの開発に躍起になって取り組んでいます」と冒頭書きましたが、これがなぜ可能になるかというとOpenAIがChatGPTをオープンAPIで提供しているからなんですよね。APIというのは、アプリケーション・プログラミング・インターフェースの略で、アプリケーションの機能や関連するデータ等を他のアプリケーションから呼び出して、活用する仕組みを指します。 これを他の企業等に公開することを「オープンAPI」って言いますよね。これをすることで、OpenAIは様々なメリットを享受することができるのですが、その一つが「サービスの多様化」です。自分達でChatGPT×アプリケーションA、×アプリケーションB、と一つ一つ作らずとも他企業が作ってくれる訳です。結果として、ChatGPTを活用した色んなサービスが生まれます。
社名はいちいち挙げませんが、日本でもこういったオープンAPIを通じた取り組みができる大手企業は沢山あります。しかし、驚くほどにやっていない企業が多いです。サービス多様化や競争力向上が進まないのは、この閉鎖的なスタンスにあると個人的には感じています。
7年間ずっと感じていたことがChatGPTの登場で強く痛感され、これまでの個人・会社としての取り組みの意義深さを感じることができました。まだまだ微力で「焼け石に水」かもしれませんが、できることを今後もコツコツと進めていければと考えています!
SOPHOLA株式会社
創業者兼代表取締役
飯野 正紀