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SOPHOLAのVision(目指す世界観)、Mission(果たす役割)、Values(大切にする価値観)を体現する取り組み・アイデアを発信。
SOPHOLAの雰囲気がわかるような社員の日常や想いも更新していきます。

増え続ける中国のAmazonセラーと必要な対策

今年、あるクライアントのAmazonドイツへの出品支援をすることになったのですが、ドイツのVAT(付加価値税)を収めるためのVAT登録番号の取得が必須になりました。そしてAmazonドイツには多くの海外セラーがいるため、ドイツのVAT登録番号申請をするセラーが殺到して取得に半年ほど要しました。このような異常事態が発生した理由は、「中国のセラーの急増」です。実際、e-commerceリサーチ企業のMarketplace Pulseによれば、2021年時点でドイツの新規Amazonセラーの80%は中国人セラーになっています。また、この企業の別の調査によれば、フランス、イタリア、カナダ、スペインなどのマーケットプレイスでは、中国のセラーの売上は既に国内のセラーの売上を上回っている状態です。

4つのマーケットプレイスの国内、中国、その他セラーの売上割合

国内 中国 その他
Amazon.fr 20% 42% 37%
Amazon.it 29% 43% 28%
Amazon.es 22% 51% 27%
Amazon.ca 15% 58% 27%

参照:Amazon Marketplace is Not International Except for China

それでは、日本はどのような状態かというと、ドイツと同様の状態になっています。新規のAmazonセラーのうち80%が中国のセラーで、今後も増え続ける可能性が高いです。つまり、今後日本国内のセラーがAmazonを利用した越境ECにせよ、日本国内のAmazonでの出品、出店にせよ、多くの場合において対策を講じないといけない競合セラーは中国のセラーになってくると予想されます。

対策を考える前に、まず中国のセラーがどのように短期間で大きく売上を伸ばすのに成功しているかを分析してみます。一番代表的なアプローチが「ブラックハットタクティクス」と呼ばれるものです。ChinaTalkの記事によれば、2016年までは、多くの中国のセラーが自社プロダクトについてポジティブなレビューを自ら大量に書いて、競合他社のプロダクトについてはネガティブなレビューをまた大量に書いて、AmazonのSEO対策をしていたそうです。AmazonがこれをBanした後に登場したのが「ブラックハットタクティクス」で、中国のセラーが「実際に競合他社の商品を購入して、フェイクもしくは危険な商品というフラグを立てて返品する」という悪質な相手を貶めるやり方です。これを何度もやられると、Amazonが該当商品やストアを非表示にしてしまい、該当商品やストアがAmazon上で再度表示されるのに数週間かかるという大ダメージを競合他社が受けることになります。Amazonとしては、低価格で多くの商品を提供する中国セラーは多くの売上を作るため、こういった行為に目を瞑ってきたそうですが、余りにも多くのメディアでこのような悪行が取り上げられ、遂にはそういった行為をしている多くのセラー・ストアをBanするに至ったそうです。

その他にも、Flamingotoolsで取り上げているように、上記に加えて、

  • 優れたマーケットリサーチ:国内外の様々なAmazonマーケットプレイスリサーチツールを使い倒して、商品のトレンドや競合情報を得て商品開発やマーケティングなどに役立てている
  • 効率的な製品加工:製造が国内でされるので(Made in China)、商品トレンドにタイムリーに対応できる
  • 比較的安い送料:多くの運送会社が中国から米国の送料に対して大きな割引きをしているらしく、米国内の送料とほぼ変わらないレベルで商品を配送できるそうです。商品の価格競争力が高いまま他国のマーケットプレイスに出品できています。
  • 低い税金:1985年、中国政府は輸出税還付政策により輸出商品に対する二重課税を免除したそうです。これによって、VAT(付加価値税)を廃止し、売り手が生産規模を拡大することを可能にしています。
  • Amazonのバックアップ:Amazonは、中国セラーセントラルを導入し、中国人スタッフを雇用し、中国人セラーにトレーニングを提供しました。さらに、中国からアマゾンの倉庫へのエンド・ツー・エンドの出荷も許可したそうです。(超特別待遇ですね)

など、中国のセラーがこれだけ数や売上を伸ばせる成功要因がたくさんあります。

それでは、「日本のセラーはどのように中国のセラーに対抗していけば良いか?」というと、先述のFlamingotoolsの記事でTIPSが以下のように紹介されていました。

  • オウンドメディアでブランドを育てる:ブランドウェブサイトを立ち上げて、日々コンテンツを投稿してブランドストーリーやプロダクトの魅力を発信していくのをお勧めしています。しかし、それをせずにAmazonだけに頼っていると、ユーザーは商品がAmazonの商品と思い、中国のセラーとの価格競争に巻き込まれる可能性があるそうです。
  • ニッチ商品を狙う:例えば工具カテゴリーで言うと、スクリュードライバー、ドリル、小型ノコギリなどのDIY商品は中国のセラーが沢山いますが、工事作業員や建築職人のようなプロの人たちが使うような工具は母数が少ないものの品質の良い商品を探しているので、中国のセラーとの価格競争を回避する可能性は高いようです。
  • 人間味を出す:フレンドリーかつ信頼できるセラーであるということを表す言葉や慣用句をきちんと使うことで、一目置かれるセラーになれる可能性があります。
  • 製品の差別化ポイントを作る:Made in Chinaの品質は一昔と違い、年々良くなってきています。競合商品分析を行い、顧客の求める高付加価値の商品機能や特徴を作ることが大切。
  • インフルエンサーを活用する:ユーザーは信頼できる人からあるブランドについて聞いた場合、そのブランドから商品を購入する傾向があります。国内インフルエンサーを活用してブランドや商品に対する認知や信頼度のアップを図るのも一つの手になそうです。

中国のセラーは先述のように多くの成功要因があるため、これからますます増えてくると国内セラーにとっては大きな脅威になり得るかと思います。上記の対策を講じながら、早期に信頼できるブランド・商品という認知を広げていくことが、中国のセラーとの価格競争に巻き込まれずに生き残っていくために重要になりそうですね!

SOPHOLA株式会社
創業者兼代表取締役
飯野 正紀

追伸:時々、不思議なことに、無性に子供の頃毎日遊んだ円盤公園に戻りたくなりますね。