Empower and Revitalize Japan for Next Generation
SOPHOLAのVision(目指す世界観)、Mission(果たす役割)、Values(大切にする価値観)を体現する取り組み・アイデアを発信。
SOPHOLAの雰囲気がわかるような社員の日常や想いも更新していきます。
Amazon広告|AmazonのACOS完全解説
前回のブログ:m19|よくあるミス集(初級編)の#2でも触れたACOSというAmazon広告独自の指標について、その目標値をAmazonセラーや広告代理店の多くが正しく解釈・設定・更新できていないことが多いと最近よく感じることがあります。今回のブログでは、このテーマについて綴っていくので、目標ACOSについてお悩みの方はぜひ読み進めていただければ嬉しいです。
1.ACOSとはそもそも何か?
ACOSは、Advertising Cost of Sales(売上高広告費比率)の略で、「売上を作るのにどのくらいの広告費を必要とするか?消費したか?」というのを確認することができるAmazon広告で最も重要なKPIの一つです。計算式は、ACOS =(広告費)÷(広告経由売上高)× 100 (%)になります。例えば、広告経由売上高1,000万円を作るのに広告費100万円を要した場合、ACOS = (100万円) ÷(1,000万円)× 100 (%) = 10%という結果です。ちなみに、このACOSと同様の意味があるROAS(Return Over Ad Spend:広告費用対効果)はACOSの逆数なので、ACOS=1/ROASで計算できます。
2.目標ACOSはどのように決めると良いか?
目標CPAやROASを決める時と同様にブレイクイーブンポイント(損益分岐点)のACOSをまず計算することをお勧めします。計算に必要なのは、商品販売価格に加えて
1)Amazon関連費用(販売手数料、配送代行手数料、在庫保管手数料、返金処理手数料、など)
2)COGS(Cost of Goods Sold:売上原価)
の2つのデータになります。(ちなみにm19の管理画面上で商品別に上記のデータは簡単に取得可能)仮に、商品販売価格が10,000円で1)1,000円、2)4,000円の場合、広告無しの利益は1受注当たり5,000円ということになります。そして、広告費5,000円かけたらブレイクイーブンとなるため、ブレイクイーブンACOS =(広告費)÷(広告経由売上高)× 100 (%) = (5,000円) ÷(10,000円)× 100 (%) = 50%と計算できます。もし、実績ACOSが50%を上回れば、その商品については損失を出してしまっているという意味です。逆に、目標ACOSを30%に設定したとすると、目標利益率20%になります。
このブレイクイーブンACOSを使って、m19では以下のように商品のフェーズ毎に目標ACOSの設定を推奨しています。
商品の成熟度 | 目標ACOSレンジ | ブレイクイーブンACOS:50%の場合 |
ローンチ時 | ブレイクイーブンACOSの0.9-1.1倍 | 45%〜55% |
成熟時 | ブレイクイーブンACOSの0.3-0.7倍 | 15%〜21% |
終了時 | ブレイクイーブンACOSの0.7-1倍 | 35%〜50% |
ローンチ時は、Amazon内での販売実績がなかったり、広告配信実績がない商品が例として挙げられます。一方で成熟時は、対象商品が1日に少なくとも数個コンスタントに販売できているような状態で、終了時は在庫補充の計画のない商品をイメージすると良いでしょう。
3.「良い目標ACOS」とは何か?
上記のような商品の成熟度による目標ACOSの目処はつけられる一方で、とにかく「ACOSを下げることが正!」となってしまっているAmazonセラーも多くいらっしゃるかと思います。しかし、ACOSを下げることに夢中になってしまい、広告費が少しずつ目減りして、売上も減ってしまうケースも…。あくまで良い目標ACOSは、各商品の成熟度や戦略に合わせて決まることを覚えておくといいかもしれません。
例えば、目標ACOSを低く設定するのが良い場合は、
1) 利益を最重視したい
2)特に商品認知を重視していない
などの目的がある際は低めに設定しても良いでしょう。
その一方で、目標ACOSを高く設定した方が良い場合は、
1) 売れ行きの悪い商品を早めに売りきりたい
2)ブランド・商品認知度を高めたい
などの目的がある際は高めに設定しても良いでしょう。
4.TACOSを加味する?
ここまでACOSを中心に解説してきましたが、TACOS(Total Advertising Cost of Sales:全体売上高広告費率)という指標もAmazon広告運用のKPIで最重要と位置付けられる指標です。「広告経由売上だけでなく、ストア全体の売上を作るのにどのくらいの広告費を必要とするか?消費したか?」という意味で、計算式はTACOS =(広告費)÷(ストア全体売上高)× 100 (%)になります。目標利益率を定める際に、自然検索経由売上も加味して計算することで余裕のあるACOS目標設定をすることができるでしょう。
5.ACOSを改善する術とは?
それではACOSを改善するにはどうすれば良いのでしょうか?他の運用型広告同様に、このACOSを因数分解することで改善すべき運用KPIがどれかが見えてきます。まず、以下のようにACOSを書き換えてみましょう。
緑色のKPIはクリック関連のKPI、紫色のKPIはコンバージョン関連のKPIにそれぞれなります。それぞれ因数分解されたKPIが前週比、前月比、前年同月比でどうなっているか確認することで、どのKPIが要因でACOSが悪化しているか把握することができます。それぞれのKPI毎に対策を確認していきましょう。
1)IMP(広告表示回数)
ポイント:IMPは全てのKPIの起点となるKPIで、このIMPが低いままだとその後のクリック、コンバージョンデータが溜まらずに広告最適化が進みません。
対策:広告表示回数の増加につながる、以下の対策を検討してみるといいでしょう。
- 広告予算の増額
- 新たなキーワードの追加
- マッチタイプの見直し
- 入札金額を高めに設定(目標ACOSを高めに設定)
2)クリック率/クリック数
ポイント:クリック率が低ければ、分母のCLICK(クリック数)も低くなり、結果としてCONV(コンバージョン数)やSALES(売上)も減ってしまいます。
対策:Amazon広告のクリック率に対する主な対策としては、以下が挙げられます。
- 広告(商品名や画像)の見直し
- 割引やクーポンなどの利用
- 良い商品レビューの増加
- キーワードと広告関連性の見直し(キーワードと関連性の乏しい広告ー商品になっていないか?)
- 広告掲載位置の確認(広告の掲載位置が低いとクリック率が低い傾向がある)
3)CPC(クリック単価)
ポイント:市場・競合他社の入札状況によって、クリック単価が上昇したりします。結果として、同じクリック数を発生させるのに必要な広告費も増えたります。
対策:Amazon広告のCPCに対する主な対策としては、以下が挙げられます。
- 目標ACOSの見直し
- 広告予算の増額
- キーワードのメンテナンス(高クリック単価の割にはコンバージョンや売上に繋がっていないキーワードを除外、停止)
4)CV率(コンバージョン率)
ポイント:広告というよりは商品や商品詳細ページがコンバージョン率の高低に大きな影響を与えます。
対策:Amazon広告のコンバージョン率に対する主な対策としては、以下が挙げられます。
- 広告掲載位置の確認(広告の掲載位置が低いとコンバージョン率も低い傾向がある)
- 良い商品レビューの増加
- エンドユーザーの商品ニーズの確認
- カート獲得率の改善
- 商品詳細ページの商品名や商品説明文を改善
5)AOV(トランザクション単価)
ポイント:意外に見落とされがちな重要なコンバージョン関連KPIの一つ。
対策:Amazon広告のAOVに対する主な対策としては、以下が挙げられます。
- 併売傾向のある商品をセット商品化/広告PR
- 高単価商品の開発/広告PR
m19の国内管理アカウントを見てもCOGSの設定が全くされていないアカウントが全体の90%以上を占めます。したがって、Amazonセラーや広告代理店がブレイクイーブンACOSの計算が全く出来ていない状態で、過去実績ベースで何となく目標ACOSを設定していたり、実績ACOSをとにかく下げることが目的になってしまっていることが多々あります。このブログがこのような現状を少しでも良くするために一役買えたらとても嬉しいです!
SOPHOLA株式会社
創業者兼代表取締役
飯野 正紀