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SOPHOLAのVision(目指す世界観)、Mission(果たす役割)、Values(大切にする価値観)を体現する取り組み・アイデアを発信。
SOPHOLAの雰囲気がわかるような社員の日常や想いも更新していきます。

長野県とユタ州

今回は、言葉にはしてきたけど文字にはしていなかった想いをブログにしてみたいと思います。
(参照:Why Utah Is Fast Becoming a Tech Hub for Startups?
私は2005年〜2010年までユタ州ソルトレイクシティーにあるユタ大学に在籍していました。その時、長野県の信州大学の学生が多く留学生としてキャンパスに訪れて、語学を勉強していることに気がつきました。(ユタ大学は、信州大学、筑波大学、法政大学、早稲田大学などと大学間学術交流協定を結んでいるそうです)この時からユタ州と長野県を紐づけて考えるようになりました。

日本に帰国すると、毎年夏〜秋にかけて長野県の中信(真ん中のエリア)を中心に観光するようになり、北アルプスの風景、自然の美しさなどを改めて目の当たりにしてユタ州と長野県は環境的に非常に似ているなぁと実感するようになりました。実際に長野県で起業しようと決めた時も、長野県をユタ州のように多くの有力なITスタートアップが次々と生まれる土地にしたいと思っていました。

シリコンバレーがあるカリフォルニア州サンフランシスコからユタ州ソルトレイクシティまで飛行機で2時間弱で行けるため、ワシントン州シアトル、テキサス州オースティン、コロラド州ボルダー・デンバーなどと同様で、ユタ州リーハイは有力なテックハブとなっており、「シリコンスロープス」という別名があるくらいです。なぜユタ州はこの地理的な優位性を活かしてテックハブになり得たのでしょうか?(有名どころで言うと、AdobeやDomoがユタ州に拠点を構えています)

まず一つは地価・物価です。シリコンバレーは地価・物価が全米トップクラスに高い場所で有名です。一方で、ユタ州の地価・物価は、それと比べると数分の1〜10分の1。プラットフォームビジネスにとって重要な巨大なデータセンター、優秀な人材を確保・維持するための充実した広々としたオフィスを必要とする有力スタートアップ企業にとっては大変魅力的なポイントです。この点は、長野県も十二分に満たしているかと思います。

次に優秀な人材です。ユタ州はテクノロジーに力を入れており、人口当たりのテクノロジー関連学位取得率は全米でトップクラスだそうで、ブリガム・ヤング大学、ユタ大学、ユタ州立大学などが大きく貢献しています。長野県の場合は、信州大学の工学部が比較的有名ですが、エンジニアなどを輩出する数は圧倒的に少ないです。

三つ目は、スタートアップ支援する行政です。全米でビジネスが盛んな州のトップ5にユタ州の名前がランクインすることもありますが、ユタ州の州政府は何十年にもわたって、企業、教育、政府、コミュニティの健全なパートナーシップの構築に注力してきており、シリコン・スロープが成功するための強力な基盤作りに貢献してきました。例えば、90年代には州知事が定期的にシリコンバレーを訪れ、ハイテク企業がユタ州にオフィスを構えるよう働きかけていた。その結果、eBay社がメインカスタマーサービスセンターを開設し、Intel社がリサーチ業務を行うようになりました。また、数年前、州政府はフェイスブックがユタ州にデータセンターを開設する際、1億5千万ドルの巨額の税制優遇を行っています。長野県でもこうした動きがこの数年で出始めていますが、まだ有力なスタートアップ誘致や育成というのは聞いたことがありません。

四つ目は、大手企業創業者・経営者たちが作ったコミュニティーです。実は、シリコンスロープという名称は、Domoの創業者が2008年に設立したNPO名から来ているそうです。その目的は、ユタ州の成長する技術エコシステムを促進することです。シリコンスロープのコミュニティには、最も革新的なスタートアップや技術系企業が6000社以上集まっています。その中には、10億ドル以上の価値を持ち、技術業界で最も優れた頭脳によって運営されている企業もあります。これら大手企業の経営者たちは、社会に還元しながら、業界に革命をもたらす企業を作ることを信条としています。社会にインパクトを与え、ビジネスプランを形にしたいと願うあらゆるバックグラウンドを持つ起業家に、平等な機会を提供しようとしています。長野県に目を向けるとこの部分も大きな違いになっており、地元の有力企業がほとんど製造業なので、このようにテクノロジーに強みを持つスタートアップ企業を集めてコミュニティーを作るという部分で地元の大手企業創業者・経営者が牽引しているというのもまだ起きていない動きだと思います。

微力ながらこのようなテックハブを長野県に創れるように今後も自社の強みをさらに磨いて、高めていきます。

SOPHOLA株式会社
創業者兼代表取締役
飯野 正紀